研究費不正利用が絶対になくならない理由

http://www.47news.jp/CN/200806/CN2008062801000553.html

研究には多くの場合、信じられないコストがかかりますが、そのほとんどは国の機関から配給される研究費でまかなわれます。しかし、いかなる実験系研究室であろうと、過去に一度も不正利用を行っていないところなどありえません。

その理由はいくつかあります。

まず、コストの問題。
日本では総ての研究物品を、国が認めた正式な業者(販売代理店)を通して購入する事が求められます。そうしないと資金の動きをチェックできないからです。

しかしこのため、日本の研究資材は卸、中卸、問屋など複雑な流通経路を経ざるを得なくなり、各ステップで利益マージンが3割程度かかるため、同じ機材や試薬でも、アメリカと比べて数倍程度のコストで購入する必要があります。

この結果、日本における研究は、アメリカと違い、信じられないコストが必要になっています。(その分人件費を圧縮して辛うじて凌いでおり、研究者の日本離れの原因となっています)


そして、研究費支給形態の問題。
日本における研究費のほとんどは、5月も終わりになってから支給され、実際に使えるようになるのは6月からです。そして、研究費の使用目的は、きわめて厳しく制限されています。例えばアメリカではグラントの研究費をいくらでも人件費に回すことが出来ます。これによって優秀な人材をヘッドハントすることも出来るわけですが、逆に教授が自分の給料を一億円にしてしまうことも出来てしまいます。日本ではこのような事が起きないよう、使用目的が厳しく決められているのです。

アメリカでは能力に見合った報酬は一般的ですが、日本で科学者が一億の収入を得たら誰が見ても異常です。(日本とアメリカの感覚の違い)

一方で、日本の研究費は書類整理の関係で、2月末までには一円残さず使い切る事が求められます(使い切らない場合、大臣が許可を出さない限り持ち越しは出来ず、来年度以降の予算が一律に減額されます)。

この結果、各研究室は、3月から6月までを、「身銭を切って(別の予算を研究費に回して)」凌ぐ必要がありますが、ここに使える経費は一般の研究室では年間100〜400万円に過ぎません。

ぶっちゃけ、一月分あるかどうかの予算で数ヶ月凌がねばならず、またこれに使える予算は、エアコンの修理とか環境のメンテに消費することのできる数少ない予算枠のひとつであり、虎の子とも言えます。
逆に、ここで多目的使用可能な予算を使い切った後にトラブルが起きたら、例えあとで薬を購入する予算が一億来たとしても、予算枠が違うと言う理由でびた一文払えない状況になるわけです。


はい、もうおわかりですね?

研究費を使い切らなければならない時期に、来年度6月までの注文分のお金を先払いするという手がいかに有効かということが。

しかし、
なぜか日本ではこれは裏金として犯罪行為と認定されています。
このプール金は、省庁の監督下にないからです。つまり、自由に使えてしまうので、やりようによっては研究者が懐に入れることも可能ですから(実際には、そのような余裕のある研究室はどこにもありません。研究コストが異常に高いため、アップアップしながらやりくりしているのが実情です)


これが、研究者の研究費不正利用が多い理由です。
簡単に言えば、制度に欠陥があるんですが、それを放置したまま運用で何とかせいという実に日本的な対処がなされた結果生じた矛盾が不正利用である、と、そういうことです。