競争的研究費の矛盾

下のエントリでは研究費の使用に関する矛盾を記述しましたが、実のところ研究の進展予定を総てあらかじめちゃんと決めていればこのような問題は起きないはずです。実際に、多くの会社は予算をちゃんと年次予定に基いて消化しています。

ではなぜ研究者はそのような当たり前の事ができないのか?

それは、実験の結果が予想できないからです。予想できないから実験する必要があるからです。あらかじめ判っている事を確認するだけなら実験は要りません。と、なると、出た結果に応じてリアルタイムで実験内容を変化させる必要があるわけです。

つまり、研究は「一寸先は闇」状態で進めざるを得ないものであり、先の予定がほとんど立たないんです。


だとするとここで矛盾が生じます。
多くの研究費、いわゆる競争的資金は、厳正な審査のうえで支給の可否が決定されます。その審査内容には年次計画や予算案も記載されています。

じゃあそこに書いてあるのは嘘なのか?

答えは、半分嘘で半分真実です。

実は、研究費の審査書類に書かれている研究内容は、多くの場合、すでに完了してしまった実験なんです。それをあたかもこれから実行するように書いているんです。そうでないと、研究が失敗する可能性が高いですよね? 研究成果が出ないと、審査によって、次回以降の研究費採択が不利になるんです。

ですから、研究室は前の年度でやりくりした予算を使って来年度の研究を進めておいて、その結果を申請書に記載して…という自転車操業を繰り返すわけです。

端的に言えば、研究計画書を見れば、その研究がすでに完成しているかどうかわかりますので、審査側も「確実に結果が出る」そのような申請書類を優先して研究費を支給しています。